身近な場所からすべて調達する 神戸のビストロのファブリック
「布が入ったことで、やっとお店が完成した気がします。」とオーナーシェフの藤田さん。
Drizzleで出す料理の食材は全て地元兵庫県のものを使っている。内装の布も、兵庫県を拠点にしている私たちに相談してくれた。
全てを身近な場所から調達するというのは簡単ではない。「食材の限られたバリエーションを様々な目線から深く捉え直さなければならない」と言う。これは自らに課した制約であり、クリエイティブの根源でもある。
そして、僕はこの価値観がこれからの”贅沢”の一つになり得るのではないからとも予感している。その土地らしさと言うのはWEBや、画面だけの情報では伝わらない。自分自身が移動して、その身体で直接感じなければならない。忙しい日々を過ごす中で、時間を使いその土地に思いを馳せると言うのはとても貴重な体験だ。
コースのメインで当たり前の様にジビエが出る。地元の山で採れた鹿。僕はビーガンではないけれど、家畜の肉を食べる事に抵抗と罪悪感があるから、その事がとても嬉しかった。
店内で使う布を考えるに当たって、僕自身の手仕事をどこかに入れようと決めていた。手仕事を入れることで、オリジナリティと量産品にはない”揺らぎ”の様なものを取り入れたいと考えた。空間の中で温かみのある小さな記憶の引っ掛かりの様なものを生み出せれば、そこで過ごした時間をより印象的なものにできるのでは無いかと考えた。
まず、取り掛かったのは円卓のテーブル席と、通路の動線の間に薄い生地のパーテション。銀色の箔を霧雨の様に散らした。コースの合間のふとした時間、席について目線の高さで見て気がつくか付かないか。それくらいの塩梅だ。ナチュラルワイン醸造所の手作りのエチケットの様な、そんなインスピレーションから生まれたアイデア。
次に窓のカーテン。時期によっては西陽が眩しいのと、冬の窓際の席は少し冷える。薄すぎず、落ち着きのある生地。細かな糸の浮き沈みのドビー柄でほのかにテクスチャーのある生地を選んだ。内装のモルタルの左官の色に溶け込みながら、布らしい温かみのある生地だ。カーテンレールを見せたくなかったので磁石を使い取付ける方法を設計した。カーテンがない時にはすっきりと何も無い窓に戻る。
最後にテーブルナプキンに取り掛かった。食事の時に、1番近くで手に触れ、見ることになる布。清潔感のある指ざわりの麻、先染の奥行きのある色目のシャンブレー。決して生地自体は主張はしないが、心地よい生地はテーブルでの体験に奥行きを与えてくれると思う。






